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印刷所さんにお願いしました。
夢のPP加工だよ!
でもうちがデータ作ったので、正直不安でござる…
PDF? psd? (´・ω・`)<ワオ

再録は「トラスト」と「トラストトラスト」です。
書き下ろしは21ページ。
「トラストトラスト」の続きです。

表紙の絵は、鳥です。



>>>



  結局、一番早く馴染んだのは幸村だった。

「小太郎殿っ」

 エンジンの音を聞きつけて、幸村が飛び上がる。ぱちぱちと小さな砂利を跳ねながら、白いトラックが前庭の松をくぐる。

「おかえりでござるっ! 小太郎殿! 今日のごはんは何でござるか!?」

 ここに三日いただけで、幸村はあっさり餌付けされてしまった。

「お手伝いするでござる!」

 軽いブレーキの音で小太郎のトラックが玄関先に停まる。

 朝から姿が見えないと思ったら、港に出ていたらしい。

 年季の入ったトロ箱にいっぱいの魚が盛り上がっている。青魚の背が快晴の日に光る。

 おいしそうな魚だ。しっぽの先までぴんと尖って、かっこいい。

「今日はおさしみかなあ」

 飛び跳ねる幸村を肩越しに見送って、佐助は麦わら帽子をかぶり直す。

「あっ、かもねー。後でわさび買ってこよっか、わさび」

「あー、いいねー。昨日毛利さんめちゃくちゃ使ってたしな……。なんかもうあの人しょうゆ緑だったんじゃね?」

「うっそー。環境にやさしくないねー」

「いやそれ環境関係なくね……」

 もう、なんだか、ぼんやりする。

 炎天下、佐助は慶次と二人、さっきから延々あじの開きをひっくり返している。

 ベッドみたいな大きさの網に三枚、裏返し終わるまでに自分たちの方がからっからになりそうだ。

「おれさまもう干物作りは飽きたかも……」

「うーん……」

 慶次も生乾きのあじをぶら下げて唸っている。

「普通干物ってあんま夏には作んないんだけどねえ」

「あ、そうなの?」

「だって腐っちゃうじゃん。まつねえちゃんが言ってたけど、干物は熱じゃなくて風で乾かすんだって」

「へええ」

「暑かったら乾く前に焼けちゃうだろ。ほっといたら腐るよ。蝿とか寄って来ちゃうしね。この辺海近いし潮風で避けてくれると思うけどさ」

「へえええ」

「っていうか夏はやっぱ干物よりおさしみだよねー。たたきとかおいしい」

「へええ……あー、おれさまもうだめ」

 佐助はころんと芝生にひっくり返った。

「暑い。死ぬ。潮風痛い。もうだめ。焼ける。死ぬ。ギブ」

 佐助は芝生の上をころころと日陰まで逃げる。Tシャツの背中を芝生の先がちくちくと刺す。火照った腕に草の冷たさが気持ちいい。

「慶ちゃん、あとよろしくーう」

「えー、もうちょいがんばろうよ佐助ー」

「ごめーん、おれさま戦線離脱ー」

「薄情者ー!」

 佐助は藤棚の下を目指して転がる。遠ざかる佐助の背に慶次が舌を出した。

「はー……」

 自分の息が熱いのか冷たいのかもわからない。

「気持ちい……」

 辿り着いた日陰の芝に頬をつけて、佐助はようやく一息ついた。汗ばんだTシャツの背を風が吹き抜ける。藤棚一つのことだけれども、まるで別世界のように涼しい。

「慶ちゃんも早く来なって。あじもうあとちょっとでしょー」

「佐助が手伝ってくれればねー」

 いー、と慶次が歯をむいた。

「慶ちゃん、不細工」

「労働は美徳だよ」

「いやいや、そうですけどーお。っていうかそもそもおれらなんで労働してんの? おれらここに遊びに来たんじゃなかったっけ? なんか毎日ごはん食べさしてもらってごまかされてる気がすんだけど、なんか、こき使われてね?」

 うーん、と慶次が首をかしげた。

 へらっと笑う。

「……ばれた?」

 真っ青な空をかもめが横切る。真夏の昼の光。目に映るものすべてが明るく輝いて見える。その中で麦わら帽子の慶次が笑った。

「実はさー、じいちゃん手伝う代わりに宿代負けてもらっててさーあ」

「はああああああ!?」

 ごっめーん、とあじを片手に慶次が笑う。

 思わず飛び上がる。

「なんだってええええええ」

 そんなの、信じない。

「海は!? ビキニは!? おっぱい見に行かないの!?」

「おれ的にはそういうのは想像で補ってほしいです」

「ちょっとおおおおおおお」

 そんなの絶対信じない。

 佐助は夏の浜辺へやってきたのだ。

 青い海、白い砂、輝く太陽、はしゃいで笑う乙女たち。夢にまで見た一夏の楽園。

 佐助はそのためにここへやってきた。

「うそだろおおおおおおお」

 佐助の声を聞きつけて、裏の倉庫から元親が顔を覗かせた。

「何やってんだおまえら」

 いやあ、と慶次が元親を振り返る。

「ほら、ちかちゃん、このあじのぷりぷりなとことか、かわいくね?」

「……なに言ってんだおまえ。あじよりかつおの方がいいに決まってんだろ」

「どっちでもいいし!」

 佐助は悲鳴を上げた。

「おれ海行く!」

 海へ行っておっぱい見て焼きそば食べておしりとか見てまったりして暮らすのだ。

 そうでなければ乾いた心は癒されない。

 このままでは満たされない思いのまま、佐助は切ない干物になってしまう。

「そんなのやだ! さいならっ!」

 ぴゃっときびすを返した佐助の前に、音もなく黒い影が差す。

「──させるかよ」

 黒い眼帯の男は、くわえ煙草のまま、佐助に向けてホースの先をしぼった。

テイク・ダット・ユウ(これでも食らえ)

 青いチューブから水が噴き出す。

 瞬間、少し、その唇が笑ったような気がした。
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