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「暗中明滅(青表紙本)」の続編 的感じ
また後で書きにくるでござる
下はサンプル
さすけ捕獲


>>>


 奥州まで忍を連れ帰る間、全ての処置は、小十郎がした。
「触るな」
 いざ陣払いして引き上げるという時も、この忍のことは全て小十郎が取り仕切って手を出させなかった。
「今これに吸われたら、魂の根まで取られるぞ」
 いいから行け、と追われた足軽が、おろおろと政宗を振り返った。
「筆頭、小十郎さんが……」
「ほっとけ」
 首の後ろの留めを外すと、鍛鉄の喉輪は妙に軽い音で手のひらに落ちた。
「面倒なことは小十郎にさせとけ。どうせおまえじゃ真似できねえ」
 目が霞む。
 戦の後、日が暮れ始めると、もう政宗の目は早い。小手を抜いた手に喉輪を握る。じんわりと肉のような熱さが沁みて、政宗はそれを足軽の手に投げた。
「仕舞っとけ。もうしねえ」
「政宗様」
 こちらを振り向きもせず、小十郎が声だけで主を咎めた。
「まだ奥州へ引き上げたわけじゃあ、ないんですぜ」
「小者が潜んでいるとでも言いたいのか?」
 政宗は口を歪ませて笑った。
「そんなもの、おれが斬ってやる。この戦、まだやり足りねえ」
 小さな音を立てて、稲妻が細く首をもたげる。それが指先を伝うのを見ながら、政宗は笑った。
「とんだパーリィってやつだ。なあ、小十郎」
「ご油断召されるな」
 渋いままの声で返して、小十郎は、きいっと糸を噛み切るしぐさをした。
「こんなもんの縁者がうじゃうじゃ出てきたんじゃあ、小十郎一人ではとても捌ききれません」
「別におまえが出張る必要はねえだろう。おれが叩き斬ってやるよ」
「並の者ならこの小十郎も安心してお任せいたしますが」
 薄闇の中で、小十郎が口許から引いた糸は、妙に白く見えた。
「こいつァ──いけねえ」
 しゅうっと引いた糸で、小十郎は自分の親指の付け根を括ると、また懐から出した時と同じように、きいっと硬い音をさせて噛み切った。
「よくこんな男つくりやがったな……」
 右と左と、親指に白い結び目をつけて、小十郎は心からというように苦い息を吐いた。
「かわいそうに」
 小十郎は灰と泥にまみれた顔をなでた。
「生きながらの地獄ってのは……むごいねえ」
 政宗は目を逸らした。
 もう吐くものも吐き尽くしたのか、汚れた口をしたまま、忍はぬかるみに投げ捨てられた時の姿で、汚れた肌を晒していた。
「そいつ……生きてるんすか」
 陣幕の陰から手桶を抱えた男が覗き込む。
 さあなとだけ政宗は答えた。
「生きてようと死んでようとおれらにゃ関係ねえよ」
 乱暴に手桶を引き寄せて、政宗は唾を吐いた。
生死不問(デッドオアアライブ)──そいつの命気にしてやってんのはせいぜいあの野郎だけだろうよ」
 真田幸村、と竜は隻眼を細めた。
「まあ、立ち上がってこられればの話だがなァ」
 そうだ。あれが立ち上がってくるのなら、だ。そうでなければこんな男、なんの興味もない。
 猿だなんだとうるさく言っていたが、政宗にとってみればこれこそが何の値打ちもない草に過ぎない。刈ろうが焼かれようがどうでもいい。ただ己の道行きに生えるのが耐え難く邪魔だ。
「小十郎」
 はい、と返事をする腹心へ、政宗は言った。
「無理に生かさなくてもいい」
「いえ」
 またきいっと糸を切る音がした。
「来るでしょう」
 小十郎が淡々とこたえた。
「あれはそういう男です」
 忍の手に、なにかまじないのように糸をくくって、頬傷の男は政宗を振り返った。
「虎狩りは──雌伏を味わわせてこそのたのしみですぜ」
 その顔は、政宗ですらぞくりとするほどの、凶相だった。
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