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・拍手お礼のやつとおんなじ感じ
・あけち登場
・だてさんはコーラはペプシ派
・なぜか4月
・入学式の日に部員勧誘
・チラシ配るぜ野郎ども!
・3きぐるみ+1セーラー+1チャイナ
・おれさまふとももとかむりです…
・夜はお花見すんぜ野郎ども!
・さなだかじるだて
・さすけかじられさなだ
・以上
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目覚ましで起きて、ワンルームの玄関先でスニーカーをつっかける。踏み癖のついたかかとで隣の瓦屋根を見上げて、ちょっと目が合う。屋根の上には、今日も猫がいる。
通りの向こうで電車の音が聞こえる。緑の屋根がレールの上を滑ってゆく。ここの電車はいつも一両きりでやってくる。連結の揺れる、がたんごとんのリズムはないけれども、佐助は割合この電車が好きだ。
屋根の上で猫があくびをして、悠長に踏切が鳴り出す。
「バイバイ」
猫に言って、自転車にまたがる。
大家さんの育てているパンジーを右に見て、こぎ出す。
白いガードレールの向こうを、電車がのんびり行き過ぎる。
今日は朝から入学式だった。
「だから今日は新入生が入れ食いだ」
そう白い方の眼帯が気炎を上げた。
「獲るぜ!」
部室の黒板には今日の夕方からの花見の予定が書いてある。
「わかってんなてめえら! 獲るぜ! ばんばん獲るぜ!」
どん、と黒板が鳴る。
「絶対に獲る」
その決意の上に、ほこりが舞う。
部長がいやそうな顔をした。
「異存はねえな!」
はあい、とあぐらをかいたソファの上で声を出す。隣で茶色い頭が背筋を伸ばして、むっ、と唸った。窓際では、眼帯の黒い方が面倒そうにたばこを吸っている。
「うんじゃ、役割分担なー」
元親はレポート用紙を取り出すと、マジックで名前を書いた。
「部長毛利、特になし!」
「ええ!」
思わず声を上げた。
「ちょ、今年もしょっぱなからそれええ」
「はいはい、代わり映えしねえな。今年も新年度おめでとう猿飛くん」
「ちょ、マジで!」
「海賊はうそつかねえんだよ」
「それインディアンでしょ!」
「うっせえぞー」
元親のペンは着々とリストを作ってゆく。
「元就、おめえ別に文句ねえだろ」
「ない」
「いやいやおかしくね! どこ行ったの平等!」
元就はしらっとした顔でパイプ椅子に腕を組んでいる。
「何がおかしい、猿飛」
切れ長の目が薄く光る。
「平等など幻想ぞ」
「そ、そうですけどおおお」
「なら、黙れ」
きゅっと小さくなる。幸村が、おお、と感心したような声を上げた。
「長曾我部、こいつらにはふさわしいだけの役割を与えてやるがいい」
「あいよー」
黒いマジックが、癖のある字で名前を並べる。
「おれと政宗、特になーし」
「ちょっとおおお!」
「おまえと幸村、とりあえずめんどい仕事行ってこい」
ほい、と紙を一枚渡される。
「それチラシの原稿なー。下で輪転機使ってこい」
「ええ! ちょ、それマジめんどいんですけど!」
「知ってる知ってる」
「早く行かぬと混むぞ」
「もう混んでんじゃないの、それ」
「んなこたねえ」
元親が胸を張る。
「入学式終わんの二十分後だからな。もう刷るとこはとっくに刷り終わってんぜ」
「二十分後」
思わず時計を見た。
止まっている。
「ていうかその時計適当に針マジックで描いてあるだけだかんな」
「うそだろーお!」
「油断すんなー」
元親が笑う。
「あと十八分」
政宗が咥えたばこで腕時計を見る。
「うっさいよっ」
黒い眼帯に歯を剥き出して、佐助は悪足掻きに、もう一人の名前を呼んだ。
「ていうか慶次は!」
「そう言えばおられぬな、慶次殿」
幸村が思い出したように呟く。
「それがし別にどうでも構いませぬが、どうされたのでしょうな」
「さーなー」
「あのバカどうせただの遅刻だろ」
ツナ缶の底に新しく灰が落ちる。
「元親、おまえ前田の携帯かけろよ」
「おまえかけろよ」
「んでだよ」
「かけろって」
「んなもんてめえかけろよ」
二人の揉めている隙間に、静かなため息が忍び入る。
「使えぬ駒よ……」
幸村が、ぴっとソファの上で飛び上がる。