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・耳とかしっぽどうこうではなく、まるごとねこ
・の出会い編
・とらじまのさなだくんはくろねこのさるとびくんに拾われました
・という話
・かすが(しろねこ)とけいじ(なんか柄つき)が出てきます
・捏造100
・さるとびくんはかすがちゃんが好き
・だったのにすでにかすがちゃんはけんしんさま(白い竜)のところへ行っちゃいました
・うわあん、おれさまさびしくないもん
・とかいうてきとうな話
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目の中が黒い。
佐助が巣穴に連れてきたとら柄の子は、まだうっうっと泣いていて、そのくせ佐助のしっぽにかじりついて離れない。
「ちょっと……。おれさままだ濡れてるからさ……、あんまくっつくとあんたまで湿るんだけど……」
「うっ」
しっぽの端を思い切りくわえたまま、とらじまの子供はまた涙ぐんだ。
「おやかたさまあ……」
じんわりと目の縁が濡れる。
「ちょ、痛い痛い」
ぎゅううと小さな歯が佐助のしっぽに食い込む。涙をこらえるのにがんばっているのはわかったが、そのために噛みちぎられてはたまらない。しっぽは佐助の自慢なのだ。
「ちょっと、旦那」
佐助をやつでのおばけだと言ったくせに、声を掛けてやったら、安心したのかその場でぺっちゃんこになってしまった。しかも迷子だったらしい。ここまで、泣いたら負けだとばかりにがんばっていたのが、佐助を見てだめになってしまったらしかった。目の中のまるいのが大きくなったまま戻らない。おかげで子供は真っ黒な目のまま佐助のしっぽに食いついている。
「痛い痛い」
前足でおでこを押すと、びっくりするくらいふわふわだった。
これが子供の手触りかと、佐助は少し驚いた。ちょっとどきどきする。かわいい。
「うう」
案外おとなしく口を離した子供は、耳なんかすっかり倒れて、なくなってしまったみたいになっている。まだひんひん泣いている口は開いたままで、小さい牙が並んでいるのが見えた。すごく小さい。先っちょの透き通ったいときりを見ながら、佐助はおなか空いてるのかな、と考えた。
「旦那、おなか減ってるの?」
ね、とぐしょぐしょの顔を覗き込む。
「迷子の間ってなんか食べた?」
全身きれいなとらじまで、足の先まで柄が入っている。
「ね」
ちょん、と小さな手を触って、佐助はこねこを見上げる。
「泣いてちゃわかんないよ」
子供は、ぐす、と鼻をすすりながら、がまんするみたいに言った。
「たべてない……」
「食べてないんだ」
でもおなかは空いてないでござる、と言う子供は、たぶんちょっとうそをついている。だって、子供ならもっとまあるいおなかをしてるはずなのに、この子はすっかりぺったんこになってしまっている。別にいいけど、と佐助は子供の頭を触った。ふかふかする。
「おれさまごはんおいしいのいっぱい持ってるけど、食べる?」
こねこの目に映る佐助は、目だけ緑色で、やっぱり真っ黒だった。
こねこは、ぱちんと瞬きをした。
「ひとさまの大事な食べものをいただくわけにはいかぬ」
きゅっと口を閉じて言う。
「おうちに入れてくれてありがとうでござる。でも、世の中はきびしいのでござる」
泣いたあとをこすって、小さいとらねこは頭を下げた。
「なので、ありがとうでござる」
「いやいや」
だっておなか鳴ってるじゃん、と言うのは、なんだかかわいそうな気がして、佐助はしっぽを揺らして考えた。
「あのさ」
ぐす、とこねこは鼻を鳴らす。
「もしさ、あんたがさ、いやじゃなければさ、一緒に食べようよ。おれさまもおなか減ったし、もしあんたがおれみたいなののごはんいやだって言うなら、誰かにもらってきてあげるよ」
たぶん、慶次なら何か食べられるものを持っているだろう。慶次は狩りもうまいし、真っ黒でも佐助のことをいやがらない。時々佐助の巣穴にまたたびを投げ込んだりするけど、慶次は佐助の友達だ。
「どうしよっか」
とらねこの前で首を傾げる。
外はまだ雨だ。
佐助はしっぽを揺らした。
「せみとね、ちょうちょとね、あるけど、どっちがいい?」
巣穴の端を雨だれが伝う。細く下がったしだの根っこが糸みたいに見える。
ふかふかとお皿代わりのこけを押さえて、佐助はとらじまの子に聞く。
「すずめのしっぽもあるよ」
ぴょん、と耳が立った。
「すずめ!」
ぴょんぴょんと揺れる。
「しっぽだけどね」
あげる、と笑いながら、佐助はこの子いいな、と思った。