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・大学BASARA
・みんなで海に行くよ!
・夏に出そうとしていたのでふつうに夏

・旅のお宿は北条のじいちゃん家
・北条家の宝 風魔小太郎在中
・そしてオリジナルキャラクターじいちゃんの先祖

・主な舞台はバス、トラック、じいちゃん家



>>>
 


夏休みが来る。

 幸せなシーズン。

 光る肌、かわいいおしり、水着は絶対ビキニだと慶次は主張する。

「しかも首の後ろでひも結ぶのあるじゃん! あれ絶対最強!」

「あと腰の横んとこでひも結ぶやつな……。あれ女の水着の下ってなんて言うんだ? パンツ? ひもパンかあれ」

「ひ、ひもパン……?」

「あー! わかるー!」

 あれいいよねー、と慶次が叫ぶ。

「ときめく! ときめく! たとえあれがほんものじゃなくてもね! ちょうときめく!」

「……ほんもの?」

 幸村がうめく。

「旦那、女の子の水着ってわかる?」

 ソファに寝転がって、佐助は幸村の背中を見る。

「ばかにするなっ」

 幸村は最近床にござを敷いた上がお気に入りだ。ソファは夏の間佐助にくれるらしい。

「あ、そっか、幸村、長野海ないから水着見たことないんだ?」

「あー、夏の海は破廉恥だからな……。行ったことねえのもしょうがねえ」

 幸村が震えている。

「慶次殿! 元親殿! 日本の屋根たる信州長野をばかにするとそれがし許さぬぞ!」

「だってよー」

 元親はだるそうにうちわを動かす。

「海ねえんだろ」

 信じらんねえ、と元親はうなった。

「おめえ、夏海行かねえで一体何して暮らすんだよ。暑ィわ腹減るわ、ひまだわむさくるしいわ、海がなかったらおれもうとっくに死んでたな。実家くせえんだよ。夏」

「あー、ちかちゃん家、男ばっかだもんね……」

「誰がちかちゃんだ。おまえはさっさと実家帰れニート」

 慶次の椅子の脚を蹴る。

「ひどーい!」

「うっせえバカ。おまえ休みの度おれん家来んのやめろ。ていうかともかくよ、夏は海だぜ幸村」

 む、と茶色い頭がござの上で姿勢を正す。

「山もまたいいものでござるぞ、元親殿。高原、牛乳、チーズにヨーグルト、川釣りに野鳥観察、飯盒炊爨、キャンプもできるでござる」

「わかってるわかってる。だけどな」

 幸村の肩を抱く。

「考えてみろ幸村。夏のあっつい時期にだ。男と女が遊びに行くわけだ。もう太陽なんかカンカンでよ、元就が飛び跳ねて喜ぶようなむちゃ晴れなわけよ。わかっか?」

「む」

 扇風機の風を浴びながら、佐助も飛び跳ねる元就を想像してみる。

「もう暑いわけよ。日向にいようが日陰にいようが関係ねえ。日傘も日焼け止めももうパーよ、パー。男どもは半袖焼け、女どもはキャーキャーキャーキャーうっせえわけよ。えー、焼けんのやだー、とかおまえ外に遊びに来た先で言われてみろ。どんだけテンション下がるかわかるか、ああ? んなもんおまえ一生車入っとけっつー話んなるだろ。何しに来てんだっつーよ」

「夏は日焼けするのが当たり前でござるからな」

「だろ?」

 これが山の場合だ、と元親の声を佐助はいささか恣意的なものとして聞いた。壁際で扇風機がぷるぷるしている。

「でもよ、幸村。海の場合は違う」

 ぐっと力がこもった。

「海は焼けに行くんだ」

 なぜか慶次が力強く頷く。

「海に日陰なんかねえ。青い海、白い砂、照り返す太陽、どこもかしこも日輪だらけだ」

「それは暑そうでござる」

「だろ? 海は暑いっつーのは常識よ、最初っからわかってんだよ。だから女どもも多少焼けたところでぐちゃぐちゃ言わねえ。いや、むしろあれだな、慶次」

「日焼け止め」

 何か二人の間で通じ合うものがあったらしい。

「日焼け止め?」

 了解できていないのは幸村だけだ。

「もー、ユッキーってばーあ」

「誰がユッキーだ」

 慶次は何かお兄さんぶりたいらしい。つれなく払われながらもめげない。こいつ絶対末っ子だな、と佐助はあくびをした。末っ子だか一人っ子だかしらないけれど、妙によその子をかわいがりたがるタイプだ。

「海の定番だろ、日焼け止め」

 な、と話を振られて、佐助は面倒になって寝たふりをした。

「あ、てめ」

 背中を小突かれる。それがなんとなく楽しくて、佐助はちょっと笑った。

「それで日焼け止めの何が定番なのでござる?」

 長野の女の子は色白だもんなあ、と佐助は考える。新潟とか秋田とかもそうだって言うけど、なんだか雪国の子は日焼けなんかしない気がする。ていうかそもそも農協に布付きの麦わら帽子は売っていても、日焼け止めはないような気もする。なんだかよくわからないが、幸村の実家の辺りの農協は、気合だ! の一言で大抵のことを片付けてしまう。おかげさまで病院がなくても平気だとか言っているらしいが、それはそれでどうなのかな、と佐助は勝手に心配する。ともかく、そんな土地にまあ、日焼け止めはないだろう。

 その間にも、慶次と元親の二人は、幸村に海と水着と日焼け止めのロマンをとうとうと幸村に言って聞かせている。

「こうさ、海で泳いだりすると日焼け止めが落ちちゃうわけ!」

「そうそうそう、そんでよ、やっぱ背中とか一人じゃうまく塗れねえだろ?」

「そうそう、むらになっちゃったりしてもだめだしね! きれいに塗るには誰か手伝ってあげなきゃだめなわけ!」

「ていうかあたし一人じゃ塗れない的なな!」

「あー! 塗れない的なね!」

「髪の毛とかもちょっと乾きかけでぱさっとしててよ、肩んとことか赤くなってんだよ」

「もう焼けちゃったよー、みたいなね!」

「そんであとになんないようにしてよとか言ってよ、水着のひもとか解くんだよ!」

「だめー! ちかちゃんだめええええ! 悪いことしちゃだめえええええ!」

「ちっげえよ、ちゃんと前は押さえてんだよ!」

「見ちゃだめよ! 見ちゃだめよかー! うわああああ、ちょうときめくー!」

「かー、やべえ、おれまじ速攻海行きてえ」

「わかるー! ちかちゃん、おれそれまじわかる!」

「だろー!」

 二人でじたばたしている。

「沖縄とかじゃなくていいんだよ。なんかその辺のちょっとしみったれたとこでよ、周り湾みてえになっててよ、両側からこうちょっと岬みてえなのがせり出してて、その奥にこう、水平線が見えてよ、そこに時々船が通るんだわ、よくねえ

「ちょういいー!」

「――そこでだ幸村!」

 元親が右手を掴む。

「おまえが塗るんだ」

 こくりと慶次が頷いた。

「この手で塗るんだ」

 幸村はぽかんとしている。

「……なぜおれが」

「女の子が困ってるんだよ。しかもほかでもない、水着の女の子が」

「塗ってやれ幸村」

「そうだよ、塗ってあげなきゃ」

「そんな――」

 佐助、とこんな時だけ助けを求められても困る。佐助はきゅっとまるくなってしらんぷりをした。

「おれさま知んなーい」

「さすけえっ」

「だっておれさまどうせ塗るなら日焼け止めよりオイルの方が好きだもん」

「オイル

 新しい選択肢に幸村は混乱しているらしい。

「オイル オイルとは何だ

「あー、いいねー! オイルもちょういい!」

「おいおい、佐助おめえ渋いな」

「いいねいいね、真夏の夢だね! こう、ちょっと焼けて火照った肌にさ、乾いた砂粒とかがついててさ、オイルしたげる前に払ったげるんだよね。あれー、どしたの、こんなとこも砂ついちゃってるよー、みたいな!」

「こんなとこってどこだよ!」

「そんなのおれ言えないです!」

「言えないようなとこについてんのかよ! 慶次おまえどこにオイル垂らすつもりだよ!」

「キャー! ちかちゃん破廉恥!」

 慶次が女子高生みたいな声を上げた。幸村が顔をしかめる。幸村は慶次のはしゃいだ声が苦手だ。

「ともかく幸村くん、そんな感じです!」

 がんばって、ときらきらした目で幸村の手を取る。

「な、なにをがんばるのだ……」

 幸村は完全にひいている。

「これは決して破廉恥行為ではありません」

「な」

「おれたちは何にも悪くないです。ただ純粋に女の子の真っ白な柔肌を守ってあげたい一心の勇気ある行動です」

 佐助はごろりと寝返りを打った。暑い。

「けいちゃんあんたよっく言うよねー。んなわけないじゃん。下心まる出しじゃん」

 ぺしっと慶次のうちわが佐助の額を叩く。

「佐助うるさい。あんたかすがちゃんいるじゃん」

「かすが殿

「もう、慶次うっさい。んなの関係ねーよ。あいつがそんなんさしてくれるわけないじゃん」

「したいんでしょ」

「そりゃしてーよ」

「破廉恥」

 慶次が笑った。

「幸村幸村、佐助あいつ破廉恥だよ」

「ちょっと慶次!」

 思わず立ち上がった。

「旦那に変なこと吹き込むのやめてくれる

「変なことじゃないもーん」

 こういう時の慶次はむかつく。

「変なことじゃなきゃなんなんだよ」

 ばか、とTシャツの肩を蹴る。

「痛いー。佐助のばかー。なんだよ、おれたち将来幸村がかわいい子に、ちょっとあなたわたくしに日焼け止めを塗ってくださらない? とか言われても困らないように教えてあげてるだけなのにさー」

「んなもん七百年生きてても言われねえよ」

「わっかんないじゃん。今年がその七百一年目かもよ」

「いいの。大体長野に海ないの。旦那はそんな破廉恥なとこ行きません」

「わっかんねえぞー。人生何があるかわかんねえからな」

「わかりますー。旦那いいこだもん」

 ちぇっ、と元親が舌打ちをする。

「……むっつりすけべのくせによ」

 ひどい。

 元親も慶次もひどい。

 そりゃ佐助だってしたいことはいっぱいある。けど、でも、がんばってるのに、我慢してるのに、なんだ、それは。

「おれさまむっつりじゃねーよ!」

 佐助は叫んだ。

「おれだって塗りてーよ! すまない少し手伝ってくれないかとか言われてーよ! でもそんなん妄想百回したって起こりっこねーよ、まじねーよ!」

 だんだん悲しくなってきた。

「おれだって海行ってちょうラブラブとかしてえよバカー!」

 そうか、と元親が唸った。

「まじねえか……」

 それは悲しいな、と幸村にまで哀れみの視線で見られて、佐助は叫んだ。

「滋賀県、海ねえよー!」

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・雑記でやってたねこパラレル
・耳とかしっぽどうこうではなく、まるごとねこ
・の出会い編

・とらじまのさなだくんはくろねこのさるとびくんに拾われました
・という話
・かすが(しろねこ)とけいじ(なんか柄つき)が出てきます
・捏造100
・さるとびくんはかすがちゃんが好き
・だったのにすでにかすがちゃんはけんしんさま(白い竜)のところへ行っちゃいました
・うわあん、おれさまさびしくないもん
・とかいうてきとうな話




>>>



  目の中が黒い。

 佐助が巣穴に連れてきたとら柄の子は、まだうっうっと泣いていて、そのくせ佐助のしっぽにかじりついて離れない。

「ちょっと……。おれさままだ濡れてるからさ……、あんまくっつくとあんたまで湿るんだけど……」

「うっ」

 しっぽの端を思い切りくわえたまま、とらじまの子供はまた涙ぐんだ。

「おやかたさまあ……」

 じんわりと目の縁が濡れる。

「ちょ、痛い痛い」

 ぎゅううと小さな歯が佐助のしっぽに食い込む。涙をこらえるのにがんばっているのはわかったが、そのために噛みちぎられてはたまらない。しっぽは佐助の自慢なのだ。

「ちょっと、旦那」

 佐助をやつでのおばけだと言ったくせに、声を掛けてやったら、安心したのかその場でぺっちゃんこになってしまった。しかも迷子だったらしい。ここまで、泣いたら負けだとばかりにがんばっていたのが、佐助を見てだめになってしまったらしかった。目の中のまるいのが大きくなったまま戻らない。おかげで子供は真っ黒な目のまま佐助のしっぽに食いついている。

「痛い痛い」

 前足でおでこを押すと、びっくりするくらいふわふわだった。

 これが子供の手触りかと、佐助は少し驚いた。ちょっとどきどきする。かわいい。

「うう」

 案外おとなしく口を離した子供は、耳なんかすっかり倒れて、なくなってしまったみたいになっている。まだひんひん泣いている口は開いたままで、小さい牙が並んでいるのが見えた。すごく小さい。先っちょの透き通ったいときりを見ながら、佐助はおなか空いてるのかな、と考えた。

「旦那、おなか減ってるの?」

 ね、とぐしょぐしょの顔を覗き込む。

「迷子の間ってなんか食べた?」

 全身きれいなとらじまで、足の先まで柄が入っている。

「ね」

 ちょん、と小さな手を触って、佐助はこねこを見上げる。

「泣いてちゃわかんないよ」

 子供は、ぐす、と鼻をすすりながら、がまんするみたいに言った。

「たべてない……」

「食べてないんだ」

 でもおなかは空いてないでござる、と言う子供は、たぶんちょっとうそをついている。だって、子供ならもっとまあるいおなかをしてるはずなのに、この子はすっかりぺったんこになってしまっている。別にいいけど、と佐助は子供の頭を触った。ふかふかする。

「おれさまごはんおいしいのいっぱい持ってるけど、食べる?」

 こねこの目に映る佐助は、目だけ緑色で、やっぱり真っ黒だった。

 こねこは、ぱちんと瞬きをした。

「ひとさまの大事な食べものをいただくわけにはいかぬ」

 きゅっと口を閉じて言う。

「おうちに入れてくれてありがとうでござる。でも、世の中はきびしいのでござる」

 泣いたあとをこすって、小さいとらねこは頭を下げた。

「なので、ありがとうでござる」

「いやいや」

 だっておなか鳴ってるじゃん、と言うのは、なんだかかわいそうな気がして、佐助はしっぽを揺らして考えた。

「あのさ」

 ぐす、とこねこは鼻を鳴らす。

「もしさ、あんたがさ、いやじゃなければさ、一緒に食べようよ。おれさまもおなか減ったし、もしあんたがおれみたいなののごはんいやだって言うなら、誰かにもらってきてあげるよ」

 たぶん、慶次なら何か食べられるものを持っているだろう。慶次は狩りもうまいし、真っ黒でも佐助のことをいやがらない。時々佐助の巣穴にまたたびを投げ込んだりするけど、慶次は佐助の友達だ。

「どうしよっか」

 とらねこの前で首を傾げる。

 外はまだ雨だ。

 佐助はしっぽを揺らした。

「せみとね、ちょうちょとね、あるけど、どっちがいい?」

 巣穴の端を雨だれが伝う。細く下がったしだの根っこが糸みたいに見える。

 ふかふかとお皿代わりのこけを押さえて、佐助はとらじまの子に聞く。

「すずめのしっぽもあるよ」

 ぴょん、と耳が立った。

「すずめ!」

 ぴょんぴょんと揺れる。

「しっぽだけどね」

 あげる、と笑いながら、佐助はこの子いいな、と思った。
・管理人はめでたく印刷所さんに印刷をお願いすることができた
・グレイト管理人
・とか言っている場合ではないが、とてもグレイトである
・グレイト
・ソーグレイト

・特にレイティングはかけていません
・しかし、一カ所「さすけ と 女の子」のセックスシーンがあるので、気になる人は「続き」を見て確認してください
・該当箇所を全部突っ込んであります
・ご確認カモン

・内容の要約
・武田対伊達
・真田さんは相変わらずうきうきして伊達さん狙い撃ち
・蒼紅対決でござる! たのしみでござる!
・猿飛さんいらっ
・くっそおれさまぬけがけして伊達くんしばいたるかんな
・んだとなめてんじゃねーぞそこのアホども
・レッツパーリー!

・のち、猿飛さんがアホなので伊達さん家に捕獲されました
・えっ

・っていう話
・別に前後編とかじゃないけど、続きを書く予定
・武田の真田っていいよねみたいな
・まあ、そんな感じ

・ちなみに申し訳ないんですが、表紙にとても指紋がつきます
・すまぬでござる



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  まあ、どんな阿呆だと思えば、クレイジーの方にバカだった。

「伊達――政宗殿!」

 よく聞こえる、よく聞こえる。

「政宗っ殿……邪魔でござらあああああ!」

 まだ姿も見えないのに、己を呼ばう声だけ聞こえる。それと炎。

「なぜどかぬ! それがしは正々堂々伊達政宗殿にお会いしたいと申し上げているではないか! そこを通せ!」

「おまえはあほたれか! このばかたれ!」

「ファックだぞ!」

「バカ! バカ!」

「誰がばかでござる!」

 おめえだよ、と政宗のところにまで味方の合唱が聞こえる。

「筆頭に会いてえってんなもんおめえみたいな野郎誰が行かすかってんだ!」

「それがし怪しい者ではござらぬぞ!」

「知ってんだよ! んなこたわかってんだよ!」

「だからおっめーここ通されねえっつわれんてんだってわっかんねーのかよタコ!」

 むうう、と早暁の戦場に陽炎が立つ。

「……それがし、それがし確かに同じ赤備えではござるが、タコ殿と言われたのは初めててござる……」

「アホか!」

「アホ!」

「だからそういうこっちゃねーんだよ!」

 アホ、と柄の悪い男たちの声がはやし立てる。

「ぬうう、奥州伊達領、こと方言、訛りの強い地域とは存じ上げておりましたが、こうも話の通じぬものとは、お館様、この幸村――不覚!」

「バカ! アホ!」

「おめーだ、おめー!」

 口々に足軽たちが声を上げる。

「ともかく筆頭のところへは行かせねえ!」

「そもそもこんな朝早くから馬突っ込ませるなんてひでえだろ!」

「そうだ! お馬さんに謝れ!」

「おれなんか晩飯もまだ食ってねえのに、今日は朝飯もねえんだぞ! ひでえよ、武田はデリカシーってもんがねえ!」

「おれたちゃデリケートなんだよ、デリケート!」

「そうだ、最低限のマナーは戦場でもマストハブアイテムだろうがよ!」

「むうううう……」

 何をのんびりしているのか、幸村は陣の端で雑兵に囲まれて騒いでいる。

「……何してんだあいつ」

「悠長ですな」

 小十郎が抜き鞘の刀を振るう。

「陽動だかなんだか知らねえが、生きてるもん使って仕掛けてくるたあ、いい度胸だ……」

 振るってもまだ残る血糊を装束の腕で拭って、小十郎は足下に転がる馬を見た。

「どうせ忍のやることだろうが……。おかげで兵糧が泥まみれで使いもんになりゃしねえ」

「ねえ、火薬んとこじゃなくて残念だったよねえ」

「ああ」

 そうだな、と小十郎が振り向いた。青く刀身が光る。

「――政宗様」

 殺気が上る。半身開いて下がった足が、政宗の右を庇う。

「――いよう、忍」

 ひさしぶりだな、と言ってやれば、赤毛の忍は、へへ、と口だけで笑った。

 戦備えの男が一人乗って、横倒しになった馬の体があばらの軋む音も立てない。ただそこにいるだけ。影が一枚、そこにあるようだった。

「何しに来やがった。おれを呼んでるのはおまえじゃなくて、ご主人様の方じゃなかったか?」

 まだ夜は明けて浅暁。忍の背後から射す光が政宗には眩しい。

「あれ、真田の旦那の声、聞こえてた?」

「うるせえほどな」

「それはごめんねー」

 人形のように同じ表情のまま、忍の目は政宗の隻眼を追っている。

「旦那ってば興奮しちゃうとすんごい大声出しちゃうんだよねー。でもさ」

 ちら、と鋼の指が政宗の目をさした。

「あんたあんま見えないらしいから、ちょうどいいかなって」

「……てめえ」

 小十郎が低い声で先足をにじる。

「ほっとけ」

 馬の体の上にしゃがみこんで、忍は細い指を組む。武将とは違う、幾何のように組み合わされた鉄が忍の体を覆う。半首にも、間近で被るのだろう血潮を流すための溝がある。胴当の分厚さは、これが戦場で腹を切ることなどないのだろうと思わせた。どうせ忍にはそんな機会など与えられないのだろうが、政宗はおかしかった。

 もしこれを捕らえて、真田忍隊、猿飛佐助の名に免じて腹を切らせてやると言ったとして、この男は死ねないような気がした。死化粧に生刃の脇差しを持って、己の腹の前で動けなくなるような気がした。無理に首を落とされるのなら、ひょうひょうと取り繕ったまま死にそうではあったけれども。

「ね、それちゃんと見えてるの?」

 そういえば周り中静かだと思った。遊びのように垂らした手に引っかかって、光る鎖に血が伝う。重さに任せて土に立った刃には何の曇りもないというのに。

「疱瘡だっけ。あんたあんましあばたとか残ってないっぽいけど、目ん玉飛び出しちゃうなんてびっくりしたでしょ。かわいそう」

 前髪の下の政宗の顔を探るように忍が目を細める。

「――どうせなら両方なくなっちゃえばよかったのにね」

 ねえ、と笑う。

 見惚れるほど、いやな顔だった。







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・基本捏造
・サグラダファミリア
・おおきな家族萌え
・と思っていたけれども
・思っていただけだった
・くっ
・どっかの忍さるとびくんを
・さなだの旦那が拾いました
・という話



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 佐助は亡霊の類いを見る質の男であった。

 だからその日も逃げる林の中で見たのを、ああ、またかと思うだけで通り過ごした。

 どこででも見る。

 振り返りもしなかった。

 早く戻れと厳命されていた。

 土の上を跳ぶ。乾いた松葉が滑る。

 低い山を三つ越えて、川に沿ってまた戦場へ戻った。霧と闇が入り用だと言うから、腕と足に傷をつけて、血を流した。

 じきに腹を切られた。背も脚も縦に刃を入れられたのがわかった。

 体から、抜けてくみたいに血が噴き出す。

 もっと、もっと深く、もっと濃く。

 押さえつける男たちの声がぐらぐらと揺れて、上と下とがわからなくなる。喉が渇く。唇を噛んだ。食いしばる。今気を失っては霧も闇もどこへ行っていいものか迷ってしまう。だから、耐えた。がんばった。

 四つ足でいたのが崩れて、肩で土を打つ。額で土を掻く。

「上は」

 上はどこだ。血はまだ流れているのか。まだ流れるか。前触れもなく腹の中のものを吐いた。辛かった。傷口を押さえる手がきつく佐助の血を絞る。悲鳴は音にならずに、腹の中で死んだ。ぼろぼろと涙がこぼれる。

 佐助が、見も知らぬ親から継いだのは、闇を生む血と、それに群がる霧だけだった。

 そんなもの、人の近くには上げられぬと言うから、佐助はいつも屋敷の遠くに置かれて、さみしかった。

 入れて欲しいな、呼んで欲しいな。明かりを見る度に思って、時々は夢にも見た。けれども、見たことのないものを描く夢は、いつも空っぽだった。人のいない家、人のいない町。たくさん人のいる夢は、声がなかった。声のある夢は、姿がなかった。

 目隠しをされたように真っ黒の夢の中、佐助は一生懸命に考えた。楽しいこと、うれしいこと。今ここにあったらと願うもの。びっしりと汗をかいて目覚める度、腕の傷を噛んだ。足の傷を掻きむしった。

 肉の赤から、音もなく闇が湧く。

 望めば、それは少しだけ佐助の言うことを聞いた。

 右へ、左へ。上へ、下へ。

 ほんの少し、ただそれだけ。

 自分たちは外法の忍らしい。

 けれども戦ではそれさえ重宝するらしかった。同じ血の忍が幾人も売られてゆく。帰る者は少なかった。戦忍としてもよい。ただ闇を作るだけのものとして使ってもよい。生きておらねば血の闇は使えぬからと、生きたまま血を絞られる。生きておればいいのだ。

 最初は己で加減せよと言われる。浅く切って、きれいに血を流す。それで済んでいた。大丈夫か、まだいけるかと問われる。頷けば、誉められた。

 食うか、と飯を出されて、傷をかわいそうにと言ってもらえた。おれらのためになあ、と泣いてくれる者すらいた。滋養のつくものをと、甘いものをくれた。うれしかった。

 けれどもそれも、次第次第にただ闇の元になる。

 前も次もない。青も白も通り過ぎて真っ黒の顔をしたのを引き出して、刃を突き立てる。

 滅多刺しだった。

 無限に血のあるわけがない。

 くう、と震える力も失った体が死ぬ。

 男たちは、大抵それにすら、気付かなかった。

 てんでに闇が薄れてゆくのを、なぜだなぜだと男たちが問う。

 悲しかった。

 佐助は、それを見下ろす死人を、よく見た。

 死んでしまった、と悲しそうな顔をしている。半分閉じた目から涙が垂れている。血のなくなった指が黒い色をしていて、ますます彼の顔を悲しませた。

 この前まで、名前を呼んでくれたのになあ。この前まで、やさしくしてくれたのになあ。

 冷たくなった体が打ち捨てられて、男が罵った。足蹴にされた体がやわらかく歪む。

「糞の役にも立たねえなァッ!」

 ふつ、と闇が濃くなった。

 もうじきここは落ちる。本陣の殿様は疾うに逃げたと言うし、ここに残ったのは、自分たちにもやさしくしてくれたような、弱い人たちばかりだった。

 だから、戻ったのにな。

 死んだ忍は、ゆらゆらと自分の体にまとわりつくように揺れている。

 頭が白くなり始めた。早かった息も、さっきからゆっくりと切れ切れに弱まっている。

 もう半分あの世の息を吸っている。

 ばらばらと人の逃げ出す音がする。

「いいか」

 男の声が吠えた。

「おまえたちはここでおれらの後を」

 その先はもう、聞こえなかった。

 逃げるなら、せめて傷をふさいでくれれば、もしかしたら、生きられたかもしれないのに。そんな風に足を縛り付けなくても、自分たちは、もう逃げられない。

 血が足りない。

 死人たちが不安そうに仲間の間を揺れている。

 辺りに煙が満ち始めた。どうやら、自分たちは生きたまま焼かれるらしい。少しでも遠く、一瞬でも早く、あの男たちは逃げるらしい。

「やだ……」

 悲しかった。さみしかった。

 なんで誰か一人でもいいから、一緒に残ってくれなかったの。うそでもいいから、せめて、すまなかった、連れて行ってやれない、すまなかったと、そう言ってほしかった。

 最後に聞いたのは、くそったれ、と彼らの殿様への罵声だった。

「……ばいばい」

 弱く言った声は、誰にも届かなかった。

・真田と佐助と慶次
・の大晦日
・がてきとうに展開される



>>>>>



  もう鍋を煮るのにも飽きた。

 マンガは読んだし、テレビは疲れたし、パソコンは慶次がいらんことばっかりしようとするから押し入れに封印した。課題はする気にもなれない。

「もう慶ちゃん帰れば」

 んん、と雑炊の残りをさらえていた慶次が唸る。

「やだ」

「いや、やだじゃないでしょ。帰れって」

「やだ」

 レンゲで空の鍋をかき回している。

「うるっさい。がらがらしたらテフロン剥がれるでしょ」

「けち」

「けちじゃない」

 ワンルームのこたつは小さい。

 いつもならそこに佐助と幸村が入ってぴったりなのに、慶次が入ったせいで、幸村がはみ出している。

 足だけふとんに入って、壁に頭をつっかえたまま、幸村はさっきから微妙にうなされている。

 なぜか幸村は慶次が来るとうなされる。

「ほら、旦那うなされてんじゃん」

「えー、それおれのせいー?」

 ビールはもうない。それをひっくり返して、慶次は空の缶を机の端に積み上げる。

「慶ちゃんがなんかやなオーラ出してんじゃない」

「え、幸村って霊能力者なの

「んなわけないじゃん」

 知んないけど、と口をつけた自分のビールも空になっていた。

「ちょ、冷蔵庫見てくんない」

「まだあんの?」

「ないと思うけど」

「ないのかよー!」

 大げさに仰け反って、妙に素早く腹筋で戻る。

「……慶ちゃんマッチョだよね」

 ちょっと自分の袖をめくってみる。

 昨日白菜三つ持つのが重たかった。

 一昨日は米とビールを一緒に持つのがちょっと重たくって、ごはん食べさしてあげるとそそのかして、幸村に半分持たせた。

 黙って拳を握って、じっと見てみる。

 一応筋は出る。溝も。

 じっと慶次の背中を見た。

「なんか言ったー?」

 腹這いのまま冷蔵庫に顔を突っ込んで、慶次が足をばたばたさせる。

「ちょ、部屋壊れる部屋」

「佐助ー! 冷蔵庫ビールないよー!」

「だからってアイス取らないでよっ」

「ミルクバーいいよねー」

 銀紙をはがす。

「佐助もいる?」

「いる」

「なになに、佐助も食べるんじゃん」

「ていうかおれのです」

「はいはい」

 テレビをつける。マッチョが映っていた。すぐ消した。

「もー、やる気ねー」

 カーペットにそっくり返る。

「旦那邪魔ー」

 うつぶせのままの肩を押す。パーカーからはみ出した腹が、ぎゅう、と鳴った。

「……腹減ってんのかな」

「うっそ」

 ぎゅううと鳴った。

「幸村何食べたっけ。結構食べたよね」

「米とか全部食べたよ、旦那。うどんもラーメンも全部旦那じゃん。もやしとか食べてたけど」

「はんぺんおれ食べたしね」

「あんた餅も食ったでしょ。旦那自分の分ちょう探してたよ」

「佐助あげばっか食べてたじゃん」

「……いいじゃん豆製品」

 くう、と幸村が鳴いた。

「なになに、佐助イソフラボンとか気にする派?」

「どうでもいいし」

 ほんとすることない、と携帯をいじる。

「なんでなんで。コンドロイチンとかイソフラボンとかなんか楽しそうじゃん。未来っぽくね?」

「……あんたコラーゲンとか好きだよね」

「キューティクルも好き」

「それ食いもんじゃないし」

「マルチファイバーとか名前が既にかっこいい」

「オットピンでも買ってくれば」

「それ名前ださい」

 きゅう、と幸村が鳴いた。

「なになに」

 慶次が急にテンションを上げた。

「オットピン? オットピン?」

「連呼すんな」

「オットピン」

「まだ言うかあ」

 悪ふざけの口を掴む。瞬間、幸村が顔を上げた。

「お館様ああっ」

 びっくりした。そのまま壁に向かって吠えている。隣が留守でよかったと心から思った。

「お館様ああああああ」

 壁に向かってきゅんきゅんきゅんきゅん鳴いている。

「この幸村、一刻も早くお館様にお会いしとうござるうううう」

「なになに? ご愛用者? 思い出の品?」

「けーいーじーいいい……」

 あれって効くのかなあ、と真剣に振り返った顔に、佐助は幸村の靴下を投げつけた。

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